第7回JSCR研究会学術集会:抄録
口腔手術、インプラント手術におけるラジオサージェリー
慶應義塾大学医学部 歯科・口腔外科学教室 河奈 裕正 先生
- ラジオサージェリーは、口腔領域の手術でも有効である。しかしながら、使用法のコツを十分に理解しないと不満足な結果を導く、すなわち、Pit Fallに陥る場合もある。本シンポジウムでは、歯科口腔外科でよく行われる口腔手術やデンタルインプラント手術におけるラジオサージェリーを供覧すると共に、その留意点について解説したい。
- 歯科口腔外科でのラジオサージェリーの特徴は、勿論、歯肉口腔粘膜を扱うことにある。使用する周波数は、一般的な歯科口腔外科用電気メスが0.5〜2.0MHzであるのに対し、高周波数帯である3.5〜4.0MHzが用いられ、この周波数は皮膚のラジオサージェリーと同様である。したがって、その切開も基本的に皮膚とほぼ同様に考えてよい。軟組織は煮たような断面で切れていき、プローブ先端に組織が固着することは少なく切れ味は鋭い。ただし、歯肉粘膜は薄くて破壊されやすいので、出力調整にはより細かな配慮が必要となる。最初はやや低出力に設定して切開し始め、組織の切れが悪いようならば、0.5ダイヤルずつ適度な切れ味になるまで出力を上げていく調整法を忠実に守るべきで、出力が高すぎると歯肉下の骨面に一気に達し、切開創の幅も広くなるため、治癒の遅延や縫合不全を誘発することになる。熱による瘢痕の影響は、口腔内では醜形は目立ちにくいが、口唇や歯肉の引きつれ感が残存する場合もあるので、プローブを一箇所に留まらせないよう留意しておく必要がある。また、プローブ柄が軽いという特徴が、口腔内ではかえってその先端が安定しない要因となることがある。とくに臼歯部手術では、口角や前方の歯によって視野や操作域が狭められるので、柄が軽いと口角圧や前歯との接触による外力に負けてしまい、操作性が悪くなり手術部位の一箇所にプローブ先端が留まることもある。その結果、当該部位に集中して過剰な熱が伝わる可能性が高くなる。対策としては、手指のレストを歯に求めたり、助手に舌や頬粘膜を圧排させ、自身は両手でプローベを持って先端を安定させたりする工夫が必要となるが、根本的には適度な重量感のあるプローブ柄の開発導入が望まれる。
- さらなる注意点としては、口腔解剖に基づいて使用するということである。例えば、大臼歯部歯肉腫瘍が口峡咽頭部に進展している場合は、解剖学的に血管が豊富になっていくために、通常の出力で使用すると出血に悩まされることが多く、最初から出力を上げて凝固モードで切開することが多い。通常、この部位の腫瘍切除はCO2レーザーの止血効果が高く、私たちはCO2レーザーをファーストチョイスとしているが、転移歯(乱杭歯)や発達した骨隆起の陰になって切開予定部位にレーザープローブが十分に届かない場合には、プローブ先端が容易に曲げられ小回りの利くラジオ波メスは非常に重宝する。したがって、この類の手術ではCO2レーザーとラジオ波メスの両方を準備して手術に臨んでいる。
- また、神経周囲での手術では細心の注意を払ってラジオ波メスを操作するか、あるいは、使用を控えることになる。歯科口腔外科領域では、オトガイ神経が粘膜表層から最も浅い部位にあり、その解剖学的バリエーションも多いため、神経への留意を怠ってはならず、この存在を意識しないと、長期に渡る下唇、オトガイ皮膚、前歯部歯肉の感覚異常をきたすことになる。神経周囲は粘膜剥離子や形成剥離剪刀にて神経を分けていくのが最も安全、かつ、確実と思われる。
- 以上、ラジオサージェリーは非常に有用であるが、一般的通念としてすべてに万能な機器、手技はないことから、敢えて、Pit Fallと思われる事項を取り上げた。
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